ひとくちに「シリンダー錠」と言っても、その種類は多岐にわたり、それぞれに構造的な特徴と、決定的な防犯性能の違いが存在します。ご自宅の玄関に使われている鍵がどのタイプのシリンダーなのかを知ることは、住まいのセキュリティレベルを把握し、適切な防犯対策を講じるための第一歩となります。かつて日本の住宅で広く普及していたのが「ディスクシリンダー錠」です。鍵の断面が「く」の字型で、両側にギザギザがあるのが特徴です。このタイプは、内部のディスクタンブラーという円盤状の部品で施解錠を行いますが、構造が比較的単純であるため、ピッキングの標的になりやすく、現在では防犯性が低い鍵の代名詞とされています。もしご自宅の鍵がこのタイプであれば、早急な交換を検討すべきでしょう。これに代わって普及したのが「ピンシリンダー錠」です。鍵の片側だけにギザギザがあるタイプで、ディスクシリンダーよりも構造が複雑で、ピッキングへの耐性も向上しています。しかし、これもプロの侵入犯にとっては、時間をかければ解錠可能とされています。そして、現代の防犯性の高いシリンダー錠の主流となっているのが「ディンプルシリンダー錠」です。鍵の表面に、大きさや深さの異なる丸い「くぼみ(ディンプル)」が複数あるのが特徴です。この鍵は、内部のピンが上下だけでなく、左右や斜め方向にも配置されているなど、極めて複雑な三次元構造をしています。そのため、ピッキングによる不正解錠は非常に困難です。さらに、ピンの組み合わせは数億から数千億通りにも及び、理論上、偶然に開くことはまずありえません。また、メーカーによる登録制度が設けられている製品も多く、所有者でなければ合鍵の複製ができないため、知らない間に合鍵を作られるリスクも防げます。鍵は、ただ扉を閉めるための道具ではありません。家族の命と財産を守るための最も重要な防犯設備です。一度、ご自宅の玄関の鍵を手に取り、それがどのタイプのシリンダーなのか、そしてその防犯性は現代の基準で十分なものなのかを、真剣に見つめ直してみてはいかがでしょうか。
我が家の鍵は大丈夫?シリンダーの種類と防犯性