新しい街、新しい部屋。希望に満ちた新生活のスタートラインに立つ時、私たちは真新しい部屋の鍵を受け取ります。しかし、その鍵で本当に安心して良いのでしょうか。前の入居者が、その鍵の合鍵を作っていないと、誰が保証してくれるでしょう。たとえ不動産会社が鍵を回収していたとしても、その前に無断で複製された合鍵が、どこかに存在している可能性はゼロではありません。この見えないリスクから自分自身の安全と財産を守るために、賃貸物件における「入居時の鍵交換」は、もはや単なるオプションではなく、必須のセキュリティ対策と言えるのです。賃貸契約において、鍵交換は誰の責任で、誰の費用負担で行われるべきなのか。これは、契約前に必ず確認しておくべき最も重要な事項の一つです。国土交通省のガイドラインでは、鍵交換費用は、物件を安全に使用できる状態に維持する義務を持つ「貸主(大家さん)」が負担することが望ましいとされています。前の入居者が退去した後に、次の入居者のために大家さんの費用で鍵を交換するのが、本来あるべき姿なのです。しかし、残念ながらこれはあくまでガイドラインであり、法的な強制力はありません。実際には、契約時の特約として「鍵交換費用は借主(入居者)負担とする」と定められているケースが非常に多く見られます。この場合、入居者は契約金の一部として、一万五千円から三万円程度の鍵交換費用を支払うことになります。費用負担がどちらになるにせよ、重要なのは「入居前に、必ず鍵が新しいものに交換される」という事実を確認することです。契約書に鍵交換に関する記載があるか、交換費用は見積もりに含まれているか。そして、交換後の新しい鍵は、いつ、何本受け取れるのか。これらの点を曖昧なままにせず、不動産会社の担当者に明確に確認しましょう。新しい生活の扉を開けるその鍵が、本当に自分だけの、誰にも複製されていない安全な鍵であること。それが、心から安心して新生活をスタートさせるための、何よりも大切な第一歩なのです。
賃貸の鍵交換は誰のため?入居時に確認すべき重要事項