私たちの住まいの安全を守ってくれている玄関の鍵とシリンダー。毎日当たり前のように使っていますが、これらもまた、いつかは寿命を迎える機械部品です。自動車に車検があるように、鍵にも適切な交換時期というものが存在します。そのサインを見逃し、寿命を超えて使い続けることは、防犯性の低下や、ある日突然家に入れなくなるという深刻なトラブルを招きかねません。一般的に、鍵とシリンダーの耐用年数は「10年から15年」と言われています。これは、内部の部品が長年の使用によって摩耗し、本来の性能を維持できなくなる目安の期間です。もし、お住まいの鍵を10年以上交換していないのであれば、たとえ今すぐ不具合がなくても、交換を検討する良い機会と言えるでしょう。では、具体的にどのような症状が現れたら、交換のサインなのでしょうか。最も分かりやすいのが、日常的な操作感の悪化です。例えば、「鍵が鍵穴に差し込みにくくなった、あるいは抜きにくくなった」「鍵を回す時に、以前より力が必要になったり、特定の角度で引っかかったりする」「ガチャガチャとしないとスムーズに回らない」といった症状は、内部のピンやスプリングが摩耗・劣化している明確なサインです。また、鍵本体の摩耗も重要なチェックポイントです。長年使った鍵は、ギザギザの山の部分が削れて丸みを帯びてきます。この摩耗が進むと、シリンダー内部のピンを正しい位置まで押し上げることができなくなり、ある日突然、鍵が開かなくなるという事態を引き起こします。スペアキーと見比べてみて、明らかに形が変わっているようであれば、鍵とシリンダー双方の寿命が近いと考えられます。さらに、防犯という観点からも交換は重要です。10年以上前のシリンダーは、現在の防犯基準では不十分なものがほとんどです。ピッキングに弱いディスクシリンダーなどがまだ付いている場合は、迷わず防犯性の高いディンプルシリンダーなどへの交換をお勧めします。鍵のトラブルは、起きてからでは遅いのです。大切な家族と財産を守るためにも、定期的な鍵の健康診断と、適切な時期の交換を心がけましょう。